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Polyphaser
(ポリフェーザー社:アメリカ)


「雷撃防護の基礎知識」
The "Grounding" for Lightning and EMP Protection

第8章:リモート装置の防護

防護のダメージは通常、ほかのI/0機器よりも電力供給ラインのサージによって起こります。これは、電力ラインに最もサージ電流が集中するという意味ではなく、ダメージが最も顕著に現れるという意味です。多くの場合、機器のダメージは接地回路が不適当である場合に生じます。同軸線も主要なサージ電流の通り道であり、サージの供給源である鉄塔からダイレクトに機器に達する、大きな表面積を持った回路を形成してしまいます。実際の電力ラインのI/0ポートをご覧になり、ここが最もダメージの生じやすい場所であることを確かめてみて下さい。

●“第一の通り道”

建屋近くで起きた雷撃によるサージ電流は、まず電力ラインに侵入します。雷撃は空中線の避雷ラインに落ちることもあります。街灯や木に落ちた雷は、そのまま地中に埋設せれた電力線に流れ込みます。このようにして電力線に流れ込んだサージ電流は、電力線上を建屋方向と、その反対方向という2方向の流れとなって電力線上を流れます。

イクイップメント方向に流れたサージ電流は配電変圧器に流れ込み、エネルギーの一部はアースに流れます。アースに流れなかったエネルギーは、(機器の破壊につながらないような)アークや、浮遊容量接合によって変圧器を通し、サージ電流は“Neutral”,“Hot”の双方の電力ラインを通って装置に達します。

建屋の電源ポートでは“Neutral”のラインはアースに接続されています。ここから更にエネルギーの一部がアースへと流れます。

この時点で雷撃のエネルギーは“Hot”ラインに残っています。雷撃の持続時間は60Hzの一周期に比べて十分小さく、サージ電流は電源周波数の60Hzに共鳴した波形となります。この波形の最大振幅、周波数、継続時間は、回路全体のインピータンスが分かっていなくては決定することが出来ません。しかし、サージ、負荷、ラインの全てのインピータンスを決定することは到底困難です。

サージインピータンスは、雷撃が直接電源ラインに起きたか、それともラインの近傍に起きたかによって変化します。また、変圧器でのエネルギー伝搬がアークによるか、浮遊容量接合によるものかによっても変化します。また、変圧器や建屋に電力ラインが接続されている場合のアースの仕方によっても大きく異なってきます。
負荷インピータンスは、エアコン、ヒーター、照明などの負荷の数やインダクタンス、抵抗値によって変化します。
ラインインピータンスは、回路の数やその長さ、そしてラインの抵抗、変圧器のインピータンスによって決定されます。

これらの多くの要因はそれぞれ独立なものであり、そのため全体としてのインピータンスの値はあらゆる値をとる可能性があり、一意的に決定することはまず不可能です。
サージ、負荷、ラインのインピータンスを決定することが不可能であるので、サージの電圧の波紋を決定することは出来ません。しかし、一般的な雷撃によるサージのデータから、標準波形というものが考案されており、通常はこの波形を用いて装置を評価します。

この標準波形の中で代表的なものは、IEEE587-1980標準波形というものです。この標準波形は電力ライン用のもので、3つのカテゴリーに分類されます。
カテゴリーAは“ロングブランチ”と呼ばれるもので、壁面のコンセントから長い距離の取り回しを行っているような場合が当てはまります。この波形は開始電圧が6kV,立上がり時間が0.5ηs、100kHzの周波数で200Aの共鳴波形(減衰正弦振動)を示します。
カテゴリーBは“ショートブランチ”と呼ばれるもので、ブレーカボックス近傍の回路のサージが当てはまります。この場合波形は同じで、立上がり時間が1.2ηs、50%減衰までの時間が50ηsという波形になっています。分極のないパルスでは開始電圧が6kV、電流値は0.5〜3kAとなっています。
雷撃の際のサージ電流で、電源コードが装置から吹き飛ぶのを見たことがあれば分かるように、6kV、3kA程度の電圧、電流で破壊が起きるとは考えられません。IEEE標準は実際にラインの破壊が発生する状況と、標準波形として定めた波形の違いについても述べられています。この差があることから、ブレーカボックスやプロテクターが必要であるという結論が導かれます。雷撃によって電源が遮断され、急激な電圧降下が生じることがむしろ、ラインには大きなダメージとなります。このブレークダウンによって生じるアークは、むしろ電源自身の60Hz電圧によて引き起こされます。サージによって電源機器が遮断されることで、ドミノ倒しのようにして他の機器に対して悪影響が伝搬していきます。

●“第二の通り道”

サージ電流が建屋内の機器に達する経路はもう一つあります。それは鉄塔に雷撃が合った場合です。理想的な接地回路が構築されている場合には、鉄塔、バルクヘッドパネル、通信機器、電源装置その他ユーティリティ機器は互いに電気的に接続されています。ちょうど、多くの独立した要因があるために回路全体のインピータンスを求めることが不可能であるように、鉄塔に雷撃があった場合にどの程度負担が電力ラインのI/0ポートにかかるかということを予測するのは困難です。I/0ポートは通常、鉄塔に対する雷撃に耐えうるように設計されています。鉄塔への雷撃の際のI/0ポートにかかるサージ電流は莫大なものであり、プロテクターはこの電流がイクイップメントハットに侵入するのを防ぎ、電力ラインにサージが流れるのを防ぐものである必要があります。

一点接地システムの場合には、流れ込む可能性のある電流を概算できるような公式が存在します。放射型の接地回路がUfer型接地と共に鉄塔と支索に接続されている場合、鉄塔基部のサージ電流は放射路に分配されます。この放射路の中で短い1本のみをバルクヘッドパネルに接続します。又、建屋を囲むアース線は、放射路には一切接続せず、バルクヘッドパネルのみに接続します。ユーティリティ機器のアース線は建屋を囲むアース線に接続します。

前章に示したようなこの接続方法を行えば、サージ電流は建屋に流入するより先に周囲の放射路を通ってアースに流れ去ります。しかし、接続を誤ると電源機器に障害が起こる原因になります。

電源機器に対する障害を防ぐ一つの方法として、イクイップメントハット内部の電力ラインのインダクタンスを高くする方法があります。回路のインダクタンスが高ければ、サージ電流は外部の放射路に押し出されます。インダクタンスを高くする方法として、電源コードを長くする方法の他に、ラインをEMTコンジットに収納する方法や、ラインをコイル状にするなどの方法があります。(しかしこの方法では、同軸コイルと同じように、ブレークダウン直前の状態で絶縁可能な電圧には限りがあります。)

こうした対策を施しても、機器がダメージを受ける可能性が一つ残っています。60Hz電源の“Hot”ラインが、サージによって電圧のピークに達するとき、この電圧がブレークダウンの原因になる可能性があります。この場合は、機器を守るためにI/0プロテクターをローカルに用いる方法が有効です。ここで重要なのは、プロテクターのアースをバルクヘッドパネルか、或いは装置を格納するシャーシからとる必要があるということです。
壁面のアースソケットに装着するタイプのプロテクター(通常はコンピュータのアースに用いられる)では、機器をサージから保護することはできません。何故なら、この接続方法ではプロテクターはソケットにアースされていますが、そのソケット自体がブレーカーボックスと電源ラインとの中間インダクタンスを持つ中途半端なアースでしかないからです。(他にアースがなく、AC電源のアース線を用いるより他に方法がない場合は必ずこれを利用して下さい。しかし、この場合理想的な接地形態とはかけ離れたものになってしまうことは否めません)UL規格ではプロテクターを壁面に取り付ける際にフランジを用いる方式を採用していないため、接地システムに電気的に接続する有効な手段を持ったプロテクターはごく限られています。ポリフェーザー社のISPLDOシリーズのプロテクターのみが、こうした接地用のフランジを持っています。このシリーズは、米国議会と米国上級裁判所によって提唱されているNRTL規格という、UL規格と同等の権威を持つ規格に準拠しています。プロテクターの接地の重要性は、装置を格納するシャーシの接地の重要性と何ら変わるところがありません。プロテクターの接地の際は、ラインのインダクタンスを極力少なく、また接地点はイクイップメントシャーシが接地されている場所と同じ地点でなくてはなりません。しかし、この地点でも僅かにインダクタンスは残ってしまします。

●2種類のサージには2種類の防護体制を!

建屋からある程度離れたところの電力ラインに落ちた雷撃によるサージ(第一の通り道を通るもの)は、変圧器やその他の機器を通る度にいくつにも分割されます。この電流に対する防護体制派、常に「最悪」の事態を考えて設計しなくてはなりません。建屋に侵入してくるサージ電流は10kAかそれ以上のオーダーです。電力供給ラインのプロテクターはブレーカーボックス、照明、ヒーターなどを保護しなくてはなりません。こうしたプロテクターはIEEE規格の3〜5kAを大きく上回るサージに耐えうるものでなくてはなりません。

●電力ライン及び電話線のための防護機器

プロテクターやその部品の設計に関する書籍は多数出版されています。多くのプロテクターは以下に示すような部品が用いられています。

  • エアギャップ
  • ガスチューブ
  • MOV
  • ツェナーダイオード(高インパルス)
  • 四層半導体
  • SCR(サイリスタ)
●エアギャップ

エアギャップは大電流を扱うことが出来ますが、動作が暖慢で日頃からの保守点検が欠かせません。標高、温度、湿度、汚染、腐食、外形、接地方法などの全てがエアギャップの性能に影響を及ぼします。

●ガスチューブ

ガスチューブ方式はエアギャップに比べて優れた方式ですが、双方共に“フォローオン電流”という問題を抱えています。60Hzの電圧波形がちょうど0Vの時に雷撃があった時には“フォローオン電流”は全く問題になりません。しかし、これ以外のタイミングで雷撃が起こり、アークが引き起こされると、このアークが60Hz電源によって維持、増幅されてしまいます。このアークは電圧波形がアーク発生電圧(20〜30V)を下回るまで維持しますが、ガスチューブの内部に放射性物質が用いられていると、この電圧値は更に低くなります。米軍規格ではガスチューブに放射性物質を用いることが出来ません。

1/2サイクルに当たる8.3msのパワーロスはデリケートな機器には問題を生じる恐れがあります。エアギャップとガスチューブは、ちょうどシリコン整流器(SCR)と同じであり、一度過電流が流れると電力は完全に遮断されてしまいます。
また、エアギャップとガスチューブはもう一つのジレンマがあります。それは、電圧の変化が生じると、ちょうと「てこ」のようにして高い電位差が伝搬し、変圧器などに問題が生じる原因になります。

●MOV

金属酸化物バリスタ(MOV)は「てこ」のように電圧が増幅するようなことはなく、動作電圧に変化がありません。MOVは酸化亜鉛の粉末から作られ、160kAものサージ電流を扱うことができますが、寿命が短いという特徴を持っています。動作電圧よりも高い電圧がかかると、電子のトンネルが生じて導通が始まります。サージ電流が最高レベルに達すると粉末が熱せられて溶融します。溶融した粉末は酸化亜鉛の形態には戻らず、回路は短絡します。通常の使い方ではMOVの寿命は短いものですが、他のあらゆるプロテクト機器でも、こうした限界電圧近くでパルスを加え続けるような使い方をすれば寿命は短くなります。
MOVを通過するサージ電流は電圧降下を生じます。理想的な状態では電圧降下は一定で、電流によりませんが、実際は電流が大きくなると、この電圧降下も大きくなります。この割合は非線形で、通常“クランピングレシオ”として知られています。

●ツェナーダイオードタイプ(SAS)

高いパルス電流の場合は、ツェナーダイオード(SAS)が有効です。これはMOVよりも良いクランピングレシオを有し、その寿命もサージのエネルギーが許容値よりも低い限りは半永久的です。しかし残念な事にSASは多くの電流を扱うことができません。SASとMOVは、動作時間の面ではほとんどのエアギャップやガスチューブよりも有効です。

MOVとSASの速い動作時間は、その高い電気容量によるものです。サージが蓄えられるわずか1ns程度のオーダーの時間の間に、鉛を用いていないMOVは動作を終了してしまいます。高いパルスを扱うSASも同様に大きな容量を有していて、1[ns]程度のオーダーの動作時間を誇ります。

●フィルタリング

MOVとSASは、鉛を用いずに使われることはまれです。これらの機器がプロテクターに使われるときには、インダクタンスを増やすために必ず鉛が用いられます。MOVやSASを用いたプロテクターはナノ秒オーダーの動作時間をもつということになっていますが、これはインダクタンスの影響を除去するためにローパスフィルだ―を用いることを前提としています。電力ラインのプロテクターでナノ秒クラスの動作時間を保証しているものでも、ローパスフィルターを用いないと所定の性能を発揮することはできません。フィルタリングは小さなスパイクやサージ、ノイズを除去するのに重要です。こうした小さなスパイク、サージ、ノイズはそれほど危険なものではありませんが、一部の機器には影響を与える場合があります。

●四層半導体

上記のリストの中で最も新しい方法が、四層半導体を用いる方法です。これはSCR(サイリスタ)機器と同じような機器で、同じサイズのものではSASよりも大きな電流を扱うことができます。SCR機器と異なる点は、“ターンオーフ”電圧が存在しない点です。

四層半導体プロテクターは電力ラインの利用に限定されていません。このタイプのプロテクターは電話線や信号線にも使用することができます。また、単独で用いることも、複数個組み合わせて使用することも可能です。

●スリーエレメント・ガスチューブ

電話線のプロテクターで最もポピュラーなものはガスチューブ方式です。これは元々、ノイズが発生し、メンテナンスが必要になる原因となるカーボンボタン方式のプロテクターの代替として考案された方法です。カーボンボタン方式は元来は雷撃防護用のものではなく、電力ラインや電話線が破壊されたときにの人員保護を目的としたものです。

カーボンボタンとガスチューブの双方は、機器を雷撃から守るにはあまり適切とは言えないプロテクターです。電話線では、ラインとアース、及びライン相互間の電位差のバランスがとれていることが重要です。一本(一組)のラインの両端に一つずつ取り付けるクロウバーを用いている場合は、片方だけ取り外すことの無いようにして下さい。そうすると大きな電位差が生じ、機器に対するダメージの原因になります。

こうした場合にはスリーエレメントガスチューブを用いるのが適当です。この装置2つのギャップを持つガスチャンバーが組み込まれており、2本のラインはこのガスチャンバーを挟み込む形で接地ラインと対向しています。ラインの片方がガスのイオン化電圧を上回る帯電をすると、端子の両端が即座にアースに短絡します。
繰り返しますと、機器のノイズなどが原因でdv/dtによって大きな電圧が瞬間的にかかる場合があるので、ローパスフィルターを用いることは重要です。

サージのエネルギーをラインの上流と下流の双方向に伝達してしまうという点では、電話線や制御ラインは電源ラインと同じ役割を果たします。電話線や制御ラインは電源ラインと比べて細い導線を用いているので、ラインのインピータンス(インダクタンスと抵抗)は電源ラインよりも大きいのが普通です。インピータンスが大きいため、機器に対する物理的なダメージは小さいものですが、ダメージを与える機器が電源ラインに比べて高価なものが多く、損害額自体は大きなものになってしまいます。

●SCR(サイリスタ)

リストの中にあった装置の中で最後に挙げられていたのがSCR(Silicon Controlled Rectifire-シリコン制御整流器)です。これはバラエティに富むサイズがあり、動作時間も短く、とりわけMOVと組み合わせて用いたときには大きな威力を発揮します。MOVが雷撃初期のサージに素早く反応し、SCRがMOVを持続時間の長いサージから保護し、その寿命を長く保ちます。電力ライン幹線の利用に当たっては、SCRのdv/dtの問題はMOVとフィルターを追加することで緩和されます。MOVとSCRを組み合わせることで、電力ラインの防護に対して最高のパフォーマンスを得ることができます。

●電話線防護の第二の方法

電力ラインが建屋に入射する個所に入射プロテクターが必要であるのと同様の理由により、電話線や信号機にも同様のプロテクターが必要です。地域の電話会社はそのサービスの一環としてビルに電話線が入射する個所にプロテクターを設置しています。一般的には、このプロテクターは信号線1本に対して1個のガスチューブプロテクターが用いられます。また、更に性能の良いプロテクターが必要とされるときには、ユーティリティーユニットに追加する形で取付け、建屋周囲の設置システムに接地します。サージによる電磁波の影響を防ぐために、ケーブルはEMTコンジットに収納します。更に一点接地を確実にするためにはバルクヘッドパネルにもう一つのプロテクターを追加します。

一つ目のプロテクターと二つ目のプロテクテーを結ぶ導線は、インダクタンスが高く、シールドされている必要があります。もし両者の距離が小さい場合には、メタルコンジットやシールドループなどを用いてインダクタンスを増やすことが出来ます。メタルコンジットを用いた場合は、回路は装置に電気的に導通し、シールドループの場合は、スチール製の電磁波シールドであるNEMAシールドの中を何重にもループします。

●電力ラインのプロテクションの重要性

DC信号線、トーン信号線、データ線、オーディオ線といった繊細なラインは、電話線と同様の慎重な取り扱いが必要です。サージ全体でのエネルギーは限られた量であるので、回路の数が増えればそれだけ1組当たりの流れるサージのエネルギーは小さくなります。単独の機器に接続された一組のラインの場合、25組が一度に接続されているラインに用いられているプロテクターよりも、性能の良いマルチステージ型のプロテクターを使用する必要があります。

複数のラインが接続されている機器の場合、MOVを機器のプロテクトと、静電フィルタの2種類の用途に用いることが出来ます。MOVはラインからライン、またはラインからアース間の接続に用いられますが、一組のラインのアンバランスによって2本の導線-アース間のプロテクターは、作動電圧が5%以内の精度で一致している必要があります。ライン相互間のプロテクターについてはこの限りではありません。

●プロテクターの設置位置

プロテクターの設置場所には、2種類の場所をお奨めします。

1: 一点接地を採用している建屋内のバルクヘッドパネルの場合は、同軸線、電源、電話線からアースにそれぞれI/0プロテクターを接続することで、低インダクタンスの接地回路を確保することが出来ます。バルクヘッドパネルを用いていないサイトの場合、前述のような一点接地のI/0プロテクターの導入をお奨めします。
2: 建屋内に入射する電源と電話線は、建屋に入る前に防護装置を取り付ける必要があります。これは、上述の一点接地プロテクターに追加して取り付けます。このような第2のプロテクターを取り付けることで建屋にサージ電流が入射して、内部の機器に被害が及ぶのを防ぐことが出来ます。
●発電機のあるサイト

建屋の内外ある全ての発電機は、建屋の電導性に関わらず、周囲の接地システムにアースしなくてはなりません。また燃料タンクも、地中に埋設される、或いはタールのピッチが塗られて絶縁されているなどの処置に関わらず、アースはきちんと設けなくてはなりません。発電機によっては、電力ラインの本線に設置されているプロテクターを若干変更する必要があります。一部の発電機は、機器のトラブルからその周波数や電圧が急変する可能性があります。多くの場合、プロテクターは電流のピークを逃がす目的で変圧スイッチの負荷側に取り付けますが、通常のプロテクターは雷撃に比べて持続時間の長いタイプの過電流に耐えうるように設計されていません。雷撃防護用のプロテクターは、電圧調整器のような使い方をせず、電圧調整の目的に設計されたSCRプロテクター、及びロードレジスターをご使用下さい。もしくは電圧変化の小さい発電機を導入し、変圧スイッチよりも上流の位置に雷撃防護用プロテクターを設置するようお奨めします。

●バッテリーを用いたサイト

一部のサイトでは、バッテリーと充電設備を備えた設備を、機器への電源に使用しています。充電器には、雷撃時のサージに耐えうるように電源回路のプロテクトが必要になります。一方のバッテリーの方は、バッテリーが正常な状態にあるときは、それ自身が回路間に電気容量を持ち、回路間に生じた電位差に対しては防護効果が期待できますが、通常の雷撃によるサージのような、回路とアースの間に生じた電位差に対しては効果がありません。もし、バッテリーが充電器の近くにあり、直流電源ラインと機器の間の間の回路が長い(高インダクタンス)場合には、機器の側にも過電流防止用のプロテクターが必要になります。

仕切りのない室内の場合、直流電源ラインの取り回し距離が長いと、雷撃時に発生する電磁パルスを拾ってしまう恐れがあります。こうした障害を防ぐために、コンデンサによるバイパスネットワークが用いられます。このネットワークは4つの並列接続されたコンデンサによって構成されていて、それぞれ鉛の短い導線が取り付けられています。電気容量は0.01、0.1、10μFをお奨めします。大きなパルス電流に対しては、SASプロテクターが過電流と電源ラインからの戻り電流の防護に補完的な役割を果たします。しかし、電源ON時の誘導電圧は大きいため、SASによって防ぐことが出来ません。雷撃防護用MOVプロテクターと同等のSASプロテクターは電源ON/OFF時の電圧調整器として用いることは出来ません。
こうした場合、電源ラインを金属製のコンジット内に収納する方法が有効です。このコンジットは、機器の側にてのみアースに接続します。

バッテリーを建屋内において接地回路の一部として組み込むことは避けて下さい。独立した導線を、それぞれの機器の電源の「+」側と「−」側に接続して下さい。そうしないと、機器から発生するノイズが接地回路に影響を与えてしまいます。

機器の一部には、電源の「−」サイドをシャーシに接続しているものがあります。こうした方法は役に立たない場合があります。こうした方法は機器の一部に発生した過電流に対しては有効ですが、雷撃時は機器に接続されたアースの電位が接地システムの電位と同じであるため、接地システムに過電流が流されたとき、機器に流入するサージを防ぐことができません。

充電器の「+」側と「−」側それぞれのコネクタと、シャーシの間に取り付けられている、低インダクタンスの鉛導体の長さが異なると、充電器にストレスがかかる原因になります。こうしたトラブルはMOVプロテクター用いることで防ぐことが出来ます。MOVの持つ電気容量が、高周波成分の流入を防ぎ回路のバランスをとります。このプロテクターはそれぞれの出力コネクタとシャーシとの間に取り付けます。

MOVプロテクターは、充電器内部アークが発生して危機に障害が発生するのを防ぎます。使用するMOVの定格電圧は、バッテリーの最大電圧よりも充分高いものをご使用下さい。また局所的な過電流の発生する恐れのある個所には、追加的にMOVを設置することをお奨めします。

イクイップメントハット内部の接続個所には塗装その他のコーティングを一切施さず、常に綺麗に保って下さい。接続部の腐食防止にはジョイントコンパウンドの使用をお奨めします。ポリフェーザー社のCCK(Copper Cleaning Kit-銅クリーニングキット)には、テストによってその実用性が保証された銅用ジョイントコンパウンドが含まれています。また、メンテナンスの際には、電気的接続に関してもテストを行う必要があります。デジタル電圧計(DVM-品番 Fluke 8012A-01)は電池によって駆動するコンパクトな製品ですが、これを用いることでmΩ単位の抵抗値を測定することができます。バッテリーを用いたサイトでテストを行う際には、接地回路にジョイント部から流出する直流電流が流れ、また−側の抵抗値をディスプレーする必要があることもあります。ディスプレーの有無に関わらず、デジタル電圧計はジョイント部の双方向の電流を測定できる必要があります。ここで測定した2方向の電流の和、或いは絶対値の差によって、接合部の抵抗値を知ることができます。

●太陽電池パネル

太陽電池、光電セル、及びここから制御器に接続する導線は全て、雷撃時に発生する電磁パルスを拾うアンテナとして作用します。太陽電池のセルは高いインピータンスを持っているため、回路間のスパイク電圧はそれほど高くはありませんが、それぞれの回路とアースの間に発生するサージ電圧は極めて高いものです。

回路とアースの間に生じる高いサージ電圧は、その回路の途中にある制御器の障害や破壊の原因になり、それよってサイトにある機器はその機能を失います。MOVプロテクターを用いることでスパイク電圧を抑えますが、クランプレシオが低く、双極子効果もあるため、これだけでは充分ではありません。ハイブリッドガスチューブ、MOV、大パルス電流用空冷SASダイオードを用いることで、効果的な接地を得ることが出来ます。

たとえパネルが直接雷撃を受ける可能性のある範囲に含まれることがあっても、太陽電池パネルを支持する構造物には、決して避雷針をとりつけないようにして下さい。避雷針があると、太陽電池パネルのすぐ近くに雷撃を誘導することになります。パネルを雷撃から保護する最も有効な方法は、雷撃をパネルから離れた場所に誘導することです。

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