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Polyphaser
(ポリフェーザー社:アメリカ)


「雷撃防護の基礎知識」
The "Grounding" for Lightning and EMP Protection

第7章:建屋内のアースとシールディング

作業員を雷撃による事故から守るためには、人体が回路の一部をなさらないようにすることが大切です。人体によって短絡することがなければ、電流が流れることもなく、危険は回避することが出来ます。

雷撃時に機器を保護するにも、同様に一点接地法の原理を用います。シングルポイント接地といわれる接地法は、建屋内の全ての機器を電気的に接続し、たった一つの接地ポイントでアースするというものです。この方法は容易な作業で導入することが出来ます。

 ●I/Oポート

I/Oポートを例にとって考えます。
単純な電話中断器を考えます。この機械には、アンテナからの同軸線、電源コード、電話線の3本のI/0ポートがあります。この場合I/0ポートはサージ電流の中継点になってしまい、電流はどれか一つのI/0ポートからの他のI/0ポートに流れ、回路の損傷の原因になります。I/0ポートを接地するのは不可能なので、この場合はそれぞれの結線にサージプロテクターを取り付けます。
サージプロテクターの目的は、機器に流れ込むサージ電流を分岐・吸収し、機器を絶縁することです。設定電圧よりも高い電圧がかかるとサージプロテクターはサージをアースに流します。それぞれのI/0ポートにサージプロテクターを取り付けることで、雷撃に強い接地システムを構築することが出来ます。

一点接地の接地システムを構築するには、すべてのI/0ポートのサージプロテクターが、接地済みのバルクヘッドパネルに接続されるか、或いは外部接地システムに接続している金属板に、機器の入ったシャーシと共に取り付けられている必要があります。サージプロテクターによって分岐させられたサージ電流は、一つの接地経路を伝わって大地に放電されます。それぞれのI/0ポートを人間の手や足にたとえると、例え手や足が一点で直流の高圧線に触れても、人体には電流は流れず、危険はありません。しかし、このとき人体は他の如何なる物にも触れてはなりません。他の物に触れた瞬間、そこが電流の出口になり、一瞬のうちに黒こげになってしまいます。同様に、機器を収納するトラックは、インシュレーターを用いて電導性のコンクリートの床から絶縁して下さい。装置を床の間に電位差が出来てしまうので、作業員にとってこの方法は危険と思われる方もいるかもしれません。確かにそれは正しいのですが、雷撃が起こりそうな気象条件の中で建屋に入って作業するという危険なことをしなければ、作業員の感電は防ぐことが出来ます。アースされたバルクヘッドや金属板にサージプロテクターをマウントすることで、I/0ポート間に流れるサージ電流をカットすることができ、電位差も発生しません。装置の入ったシャーシも同一の点で接地されているために、機器のダメージは起こりません。また、サージプロテクターのインピータンスは低く、誘導による電位差も発生しません。

 ●プロテクターのマウンティング

プロテクターからの分岐させた電流をアースに導く回路のインダクタンスは、出来るだけ低いものでなくてはなりません。もしアース済みのバルクヘッドパネルや幅広の接地板などの低インダクタンスの回路を使わないときには、サージプロテクターをマウントする場所は建屋内側の床と同じレベルに取り付けたプレートに取り付けるのがベストです。この場合、プレートは必ず外部の大地にアースしなくてはなりません。(機器が電気的に独立したキャビネットにない場合や、機器のあるフロアが2階以上の場合にはこの位置はさほど重要ではありません。)

サージ電流を逃がす回路には、平板の導体が最も良い電導性を示します。平板は表面効果の影響によるインダクタンスが最も小さい形状です。建屋の端などで平板を折り曲げなくてはならないときも、半径のRが約20cm以上になるようにして下さい。同じRでも、平板はワイヤーよりも低いインダクタンスになります。屈曲部では、曲がる前の部分の導体と、曲がった後の部分の導体が発生する磁界が干渉することで、相互誘導が発生し、この部分でのインダクタンスが増加する原因になります。平板では、曲げたときに出来る角度と平板の厚さによって、平板の一方の側ともう一方の側との距離が大きくなり、相互誘導の効果は弱まります。また、磁場はこの位置でちょうど双極子アンテナのような状態になり、最も周囲の磁界の影響を受けやすくなります。そこで、本物のアンテナの磁界に与える影響を最も小さくするように、平板の平らな面を鉄塔に正対させて設置します。

プロテクター回路のインダクタンスがどんなに低いものであっても、導体である以上はいくらかのインダクタンスは存在します。サージプロテクターから分岐された電流がこのインダクタンスを通過するとき、L di/dt で表される電圧降下が生じますが、この電圧降下はデリケートな装置に対しては問題となります。信号線を例にとると装置の入ったシャーシよりも電位が高い状態におかれます。
このシャーシとサージプロテクターを同じ電位に保つためには、シャーシとバルクヘッドパネル(又はプロテクターパネル)との間を低いインダクタンスの導体で接続することが必要です。この導体のインダクタンスは同軸線のインダクタンスよりも低くなくてはなりません。

●シールド電流

Ufer型接地を放射状の接地回路および、一点接地の建屋に接続したシステムでは、起こりうる全ての問題は解決していると言えるでしょうか?答えはノーです。微弱ではありますが、サージ電流がイクイップメントハットの中の同軸線を電流が流れることを避けられません。このことには2つの理由があります。

(1) シャーシは人の体と同じように、いくらかの静電容量を持っています。導体のインダクタンスにより、シャーシの電位が外部よりも高くなったとき、この電位に見合うだけの電気量がシャーシに蓄えられなくてはならず、電流が流れます。この電流が同軸線を通るため、同軸線電流が発生します。

(2) 雷撃のサージ電流により発生するパルス電流が強力な電磁場が誘起されます。装置が入った建屋が電磁場に対するシールディングを施していないと、装置からプロテクターパネル、あるいは接地システムに接続している導線がちょうどアンテナの役目を果たしてしまします。接地システムは低電位に保たれているので、導線の装置側の端がちょうどアンテナの先端のように高電位になります。ここで誘起されるパルス電流の一部が同軸線を通って流れてしまいます。

ポリフェーザー社の絶縁タイプのプロテクター(IEタイプ)ではこうした諸問題を解決し、同軸線電流がほとんどゼロになるように設計されています。

●磁場のシールディング

雷撃による大電流によって誘起された磁場は、イクイップメントハットの内部の導線を横切るときに誘導電流を生じます。サイトの接地システムは5Ω程度の低い抵抗値になるように慎重に設計されている反面、建屋のほうは、アンテナのすぐ近くに磁気的な対策が何も、或いは僅かしかなされないまま建てられている場合がほとんどです。鉄塔とイクイップメントハットとの距離も通常は近く、接続する導体も短いものが使われています。このことがサージ電流を速やかに吸収し大地に流すという接地回路の目的の大きなお荷物になっています。また、この距離の近さが建屋内に大きな磁場が誘起する原因にもなっています。

アルミニウムで作られたシャーシのような構造物は、低周波の磁場をシールドする効果は殆どありません。一方、メッシュ状の鉄筋の入ったコンクリートは幾らかのシールド効果がみられます。一重、或いは二重の壁と共に用いられる、イクイップメントハット用のスチール製ボックスは、ファラデーシールドとしてRFエネルギーと磁場の双方をプロテクトすると共に、装置を接地回路の優れた一体性を確保します。又、この場合は建屋内部のシールディングのためにスチール製のコンジット(EMT:電線を格納する配管のこと)を使う必要はありません。しかし、ボックスにスチール以外の非鉄金属を用いた場合には、導線の全てを絶縁されたEMTの内部に収納する必要があります。

●距離を開ける/シールディングを施す

根本的な解決のためには、鉄塔と建屋の距離を大きくとるのが一番の方法です。磁場の強さは距離の2乗に反比例して小さくなります。雷撃時の強力な磁場が回路内に侵入してダメージを与えるのをくい止めるためには、距離をそれだけ大きくとることが大切です。しかし、アンテナと建屋との距離を大きくとってしまうと、今度は取り回しのための導線を長くしなければならず、インダクタンスが増え電圧降下が大きくなり、鉄塔の流れ降りてくるサージ電流が増えてしまいます。このように建屋との距離と磁場の防護とは相反関係あります。但し、鉄塔からイクイップメントハットまでの配線を鉄塔に直角に延ばしてくれば、導線は鉄塔で誘起された磁場を横切ることはなく、サージ電流が増えることはなく、このことによるデメリットはありません。磁場による誘起を考えるとき、バンクヘッドパネルをまず第一に考え、ここでの誘導が最小となるように設置し、ストラップも装置に対する防護になるように装置のすぐ脇に鉄塔に正対させて配置します。

●隠れたダメージ

装置に対する磁場のストレスは、長い時間が経った後の装置の故障につながるために、磁場のシールドは重要です。アメリカ陸軍は「隠れたダメージ」といわれるこの障害を、多額の費用をかけて研究してきました。「隠れたダメージ」は装置のMTBF(平均寿命)を短くすることが知られています。雷撃による高速ストレスが、半導体内の小さなクラックに作用し、突然の破壊につながります。PCボードレイアウト、デカップリング、配線長さ、I/0プロテクション、装置カバーなどで設計段階で考慮がなされていない場合には、適切な保証とバックアップ体制の整ったメーカーを選ぶのが唯一の方法です。

●大規模サイトの接地とシールディング

15m四方以上の大規模サイトでは、雷撃のシールディングはさらに重要になる一方で、シールディングのためのスチールシートは使用出来なくなります。コスト低減の手段としてグラウンドハローというものを用いることがあります。これは人員防護の目的と雷撃の低周波成分を防ぐ目的の2つがありますが、それほど大きな効果は期待できません。このハロー装置のラックに使っている例もありますが、これは一点接地の原則に反する誤った使い方です。

 ●シャーシの接地

装置のラックは通常、大型の装置を設置するために用いられています。ラックパネルは塗装されていたり、それを保持するレールが酸化していたりすることがしばしばです。このペイントや酸化物は、ラックと装置が電気的な一体性を保つためには十分障害となるほどの抵抗を持っています。

ちょうど放送の中継局のように、時期的な防護がなされていない建屋が強力なRF磁界の仲におかれていたとすると、ボルトとシャーシの接合部分にみられるような、異種の金属間の接触は、「ダイオード」のような働きが発生します。こうした「ダイオード」は相互変調と整流障害の原因になります。

装置を接合する適切な方法は次ページに掲載されています。垂直な接地バスはインシュレーターによって保持されています。それぞれの装置は短い導線のバスによって電気的に接合されています。この形態だと、接合部で発生したノイズはこの短いループの中で消滅してしまします。

この短いループの回路は、大出力の放送装置による強力なRF磁界近傍の周波数において、動機アンテナとして作用してしまう恐れがあります。この同期は実際の運用周波数の近傍である場合があり、またそれらの運用周波数の倍数周波数であることも考えられます。グリッドディップメータを用いて、問題が発生しうる周波数を事前に調査することをお奨めします。

ループの同期周波数は、別の方法で調べることもできます。スペクトル分析器をループと並列に接続し、ループの接/断時のノイズのレベルを観察することで調べることが可能です。同様の方法はAMチューナーのサービスモニターにも用いられています。

●スクリーンルームの接地

スクリーンルームは、大出力の変圧器や雷撃、高高度での核爆発などによって発生する、強力なRFパルスと電磁気パルス(EMP)から装置を保護しなくてはなりません。しかし、スクリーンルームを防護するための最善の方法は現在のところまだ見いだされておらず、設計者は慎重に設計を行う必要があります。

 ●マルチポイント接地

マイクロプロセッサーのメーカーの中には無線装置との接続時に生じるノイズとRF電流を防ぐためにマルチポイント接地を採用しているところもあります。セルラースイッチのサイトを例にとって考えると、これらの多くは大規模なサイトであるために、一点接地のような低インダクタンス接地を建屋内部の高い位置に設置することは、スクリーンルームのないサイトの場合あまり実用的ではありません。そこでマルチポイント接地が有効になります。

ここで注意しなくてはならないのは、このマルチポイント接地にすぐに飛びついてはならないとということです。このマルチポイント接地によって生じる弊害は、これによってRF装置から防ぐことの出来るノイズよりも有害な場合がしばしばです。

●マルチポイント接地に伴う弊害

電子が他の場所に移動するには、ある有限の長さがかかります。そのために接地システムの設計は複雑になってしまいます。深刻な事故は、アースが周囲の土壌への完全に導通がされていないと発生します。人の両手が異なる場所に触れていると、それだけで回路が形成されることを思い出してください。大きな建屋のサイトの場合、マルチポイント接地が採用されている場合がありまが、このようなサイトに雷撃があった場合、一部のサージ電流は建屋内部に流れ込みます。アースへの回路が複数あると、それらの全てにサージ電流は配分されてしまいます。これらの回路のL di/dt の値が十分に小さければ装置に対するダメージはありません。理想的にはそれぞれの装置からアースまでの回路の長さが同じであることが望ましいと言えます。しかし、そのためには内部ハローから60pおきに接地システムへの回路を引かねばなりませんが、こうしたことは通常行われておらず、これが多くの内部ハローが問題を抱えている原因になっています。こうした場合は、ハローから接地システムに多数の回路を接続するよりも、一点接地システムを導入する方が実用的であると言えます。

 ●「電流拡散時間」について

マルチポイント接地の考え方は、外部の土壌との電導性を重視して考えられた方法です。つまり、I/0ポートは電流を建屋内部に導入するための働きのみであり、マルチポイント接地によって多くの接地回路が形成されるとそれだけL di/dt による電圧降下は小さくなります。電流が接地システムに拡散していく時間は後に詳しく述べますが、ここでは一点接地でなくマルチポイント接地の場合に起きる、サイトの周りの土壌に電流が拡散していく時の問題点を述べることにします。ここにあげる図のようにして、電流は周囲の土壌に拡散していきます。ここで、電流の大半は建屋の外部で拡散することと、電流が建屋に達するにはある時間がかかることに着目して下さい。このことがマルチポイント接地回路において建屋内部に電流が侵入してくる原因を理解するカギになります。ここで、放射状に拡散していく電流と建屋流れ込もうとする電流のスピード競争が生まれます。通常では建屋を通る回路の方が僅かにインダクタンスが高く、電流は放射状に拡散する方が若干早くなっています。マルチポイント接地の接地点を増やすことで、建屋の回路のL di/dt の値を減らせば、こちらを流れる電流のスピードは速くなります。このことは即ち、招かざるサージ電流がより多く建屋内部に侵入するという結果につながります。

●Ufer型接地の際の建屋内部

新築の建屋でUfer型接地の導入を行う場合には、それほど慎重にインダクタンスの心配をする必要はありません。床のコンクリートに塗り込められている格子状の鉄筋を、低インダクタンスのグリッドとして利用することで、有効な接地が得られます。もしフロアのあちこちから接地用のワイヤーが突き出ている状態が美的に不適当であるとお考えであれば、機器の設置されている直下にこの接地点を持ってきて、取り外しが容易なように工事を行うようにして下さい。格子状の鉄筋とシーリングハローとの垂直距離は60cmが限度です。床の格子状の鉄筋は、同様に建屋外部の放射状の設置回路と、垂直距離にして60cm以内で接続するようにして下さい。

●ケーブルトレー

 大がかりなサイトでは、頭上の同軸線やその他のケーブルの取り回しにケーブルトレーが用いられます。このサイトでの接地で最も有効な方法の一つは、このトレー自体を接地してしまう方法です。この方法を用いると、同軸線からのアークの発生を抑え、雷撃に伴って誘起された電磁場から低周波機器を守る磁気シールドの役割も果たします。

トレーの接合部にはジャンパー線を接続し、一つの導体としての機能を維持するようにします。このことで、接地回路と一体化され、大きな表面積を持つことになり、優れた接地回路を形成します。

絶縁されたポートプロテクターを用いている場合以外は、トレーは必ずバルクヘッドパネルを用いて接地するということを忘れないで下さい。ポートプロテクターを用いる場合には、トレーは電源回路のアースを経由して外部接地回路と接続され、バルクヘッドパネルとは絶縁されます。また、ノイズの多い回路を高精度の回路に隣接させて敷設しないようにして下さい。この場合はノイズの多い回路をEMTコンジェットの内部に収納し、同じトレー上にあるほおかのラインとクロスカップリングを起こすことがないようにして下さい。

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